サブリース
Sublease
「一括借り上げ」「家賃保証」とも呼ばれるサブリース。仕組み・メリットだけでなく、注意すべきリスクや法律・判例までを、わかりやすく整理しました。
SUPPORT
サブリースに困っている方へ
状況に応じた対応の考え方と、公的な相談窓口・資料をまとめました。(本セクションの制度・条文は2026年7月時点の情報です)
いま、こんな状況ではありませんか?
減額通告を受けたら(対応ステップ)
業者側の手続を確認する
サブリース業者が契約期間の途中で借地借家法32条1項の減額請求権を行使しようとするときは、行使の前に、変更(減額)しようとする家賃の額とその設定根拠等について、重要事項説明と同様の方法で書面を交付したうえで説明する必要があります(国土交通省FAQ)。書面と根拠の提示を求めましょう。
その場で同意する必要はありません
まず協議から始めます。
協議が調わない場合
調停・裁判で解決します。裁判が確定するまでの間、大家は自ら相当と認める額の家賃の支払を請求できます(借地借家法32条3項)。
留意点
減額を正当とする裁判が確定すると、減額の効力は請求時に遡り、受け取り済みの差額に年1割の利息を付して返還する義務が生じます。
迷ったら早めに相談を
下記の相談窓口へお問い合わせください。
業者の違反にはペナルティがあります(賃貸住宅管理業法の罰則)
| 不当な勧誘等(事実不告知・不実告知、法29条1号)違反/業務停止命令違反 | 6月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金、または併科(法42条) |
|---|---|
| 契約締結前・締結時の書面交付義務(法30条・31条)違反 | 50万円以下の罰金(法43条) |
| 誇大広告等の禁止(法28条)違反、国土交通大臣の指示違反 等 | 30万円以下の罰金(法44条) |
このほか、国土交通大臣による指示・業務停止命令等の監督処分の対象になります。
国交省への「申出制度」(違反の通報)
誇大広告等の禁止(法28条)・不当な勧誘等の禁止(法29条)・契約締結前の重要事項説明義務(法30条)等の違反行為は、オーナー等が国土交通省に申し出ることができます。申出情報をもとに国が調査・立入検査を行い、違反があれば監督処分等で対応します。
申出制度のご案内(国土交通省)相談窓口(国土交通省FAQ掲載の窓口)
- 消費者ホットライン:局番なしの「188」(最寄りの消費生活センター等の相談窓口につながる番号)
- 法テラス・サポートダイヤル:0570-078374(法制度や相談機関の案内)
- 公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会:https://www.jpm.jp/consultation/(賃貸住宅オーナーのトラブル相談)
- 公益社団法人 全国賃貸住宅経営者協会連合会(ちんたい協会):0120-37-5584(一般的なトラブル相談。法律に関わる相談は不可)
オーナーが個人で、同種の行為を反復継続的に行っているとはいえない場合、マスターリース契約は消費者契約法上の消費者契約に該当し、同法の適用を受ける可能性があります(国土交通省FAQ)。
公式資料リンク集
- 賃貸住宅管理業法ポータルサイト(国土交通省)
- オーナー向け注意喚起リーフレット「賃貸住宅経営(サブリース方式)をお考えの方へ」
- 入居者向け注意喚起リーフレット「サブリース住宅の入居者の方へ」
- 制度概要ハンドブック
- よくある質問(FAQ)
「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」「特定賃貸借標準契約書」も国土交通省から公表されています。上記ポータルサイトから辿ってご確認いただけます。
トラブル実態の補強データ
国土交通省の調査では、サブリース業者とのトラブルの主な内容は「家賃の見直しなどの条件変更」「修繕の箇所や費用負担」「物件の収入や費用、契約内容の変更についての不十分な説明」とされています。
出典: 国土交通省 令和5年度 賃貸住宅管理業等に関するアンケート調査(RETIO 138号掲載の国土交通省講演資料より)
STRUCTURE
サブリース契約の概念と仕組み
サブリース契約とは、不動産会社(特定転貸事業者)が建物の所有者である大家(オーナー)から、マンションなどの集合住宅・戸建て・投資用マンションの一室を一括して借り受け、それを入居者(転借人)に転貸(又貸し)する賃貸借契約の形態です。大家は入居者と直接契約を結ばず、一括借り上げを行う不動産会社が契約相手となります。
正確には、大家と不動産会社の間で結ばれる契約を「マスターリース契約(特定賃貸借契約)」、不動産会社と入居者の間で結ばれる契約を「サブリース契約」と呼びますが、実務ではこれら一連の契約を総称して「サブリース」と呼ぶのが一般的です。
大家(オーナー)
建物の所有者
不動産会社
特定転貸事業者(一括借り上げ)
▶入居者(転借人)
第三者へ転貸
最低保証賃料
契約時に満室想定の賃料をシミュレーションし、その約80〜90%が「最低保証賃料」として毎月大家に支払われるのが一般的です。残りの10〜20%は手数料相当として差し引かれます(いずれも業界の一般的な相場です)。
満室想定賃料を100%としたときの内訳イメージ
空室の有無や家賃滞納のリスクを大家が個人的に負わずに済むため、一定の賃料収入を確保でき、契約期間内の経営計画・収入見通しを立てやすいのがメリットです。
礼金・更新料は会社の取り分になる場合が多い
通常は大家の収入となる礼金や更新料も、サブリースでは空室リスクを保証する対価として、不動産会社の取り分とする契約が多く見られます。
「免責期間」中は支払いが行われない
多くの契約には免責期間が設定され、その間は入居者から家賃収入があっても大家への支払いはありません。引渡日や退去時から1〜3カ月程度が一般的ですが、退去のたびに適用される契約や、より長期に及ぶ設定もあり、この期間の早期入居による収益は会社の利益となります。
COMPARISON
3つの管理・運営方式の違い
サブリース方式
- 契約関係
- 大家と会社がマスターリース契約を締結し、会社が入居者へ転貸
- 手数料・保証
- 一般に家賃の10〜20%が手数料相当。満室想定の約80〜90%を保証(いずれも相場)
- 空室・滞納リスク
- 不動産会社が引き受け(空室時も一定額を保証)
- 大家の負担
- 建物管理・入居者対応を会社に一任。手間は最小限
管理委託方式
- 契約関係
- 大家が入居者と直接契約し、管理業務の一部を会社に委託
- 手数料・保証
- 家賃の5%程度が管理委託手数料の相場
- 空室・滞納リスク
- 大家に帰属(空室・滞納は直接減収に)
- 大家の負担
- 募集・集金・保全を委託。収入は稼働状況に左右される
自己管理方式
- 契約関係
- 大家が入居者と直接契約し、すべての管理を自身で実施
- 手数料・保証
- 外部委託コストは発生しない
- 空室・滞納リスク
- 大家に帰属(すべて直接負担)
- 大家の負担
- コストは節約できるが専門知識が必要。時間と手間は全て自己負担
TROUBLES
契約を巡るトラブルの実態
管理負担の軽減や収入の安定を謳う一方で、大家の誤認や事業者の不適切な勧誘に起因するトラブルが後を絶たず、深刻な社会問題となっています。
大家側に生じる主なトラブル
01
執拗・不適切な勧誘
相続税対策や建て替え、投資用ワンルーム購入の勧誘で「家賃は一切下がらない」「絶対に損をしない」といった断定的説明が行われ、永久的な同一賃料保証と誤解したまま契約してしまう。融資審査を通すための書類改ざんや見せ金など、不正な融資工作が確認された事例もあります。
02
減額通告・中途解約
数年ごとの賃料見直しで保証額を大幅に引き下げられ、ローン返済計画が破綻するケースが見られます。解約しようにも、サブリース会社が借地借家法上の「借主」として保護されるため、大家からの解約には正当事由や立ち退き料が必要となり、容易に応じてもらえない・高額な違約金を求められることもあります。
03
業者の経営悪化・倒産
業者が破綻すると毎月の家賃支払いが停止するだけでなく、入居者から預かっていた敷金の回収が困難になり、退去時の原状回復費用や維持管理費用をすべて大家が直接負担せざるを得なくなります。
入居者側にも及ぶ不利益
- 管理会社がオーナーへ家賃を滞納していることを理由に、入居者がオーナーから家賃を二重請求される。
- サブリース会社が電気料金を滞納し、入居中の部屋の電気が止められそうになる。
- オーナーと業者間の契約終了を理由に、入居者が突然2カ月後の退去を求められるなど、居住の安定が脅かされる。
参考: 国土交通省「サブリース住宅の入居者の方へ」注意喚起リーフレット ほか
STATISTICS
消費者相談の動向(PIO-NET)
91.0万件
2024年度の相談件数(前年度比 約2万件増)
第4位
「賃貸アパート・マンション」34,838件(全体の3.8%)
38.6%
契約当事者が65歳以上の相談割合(2020年度以降で最高)
※契約当事者の年齢が不明・無回答の相談を除いて算出した割合
65歳以上の消費生活相談件数の推移
全国の消費生活相談(PIO-NET)
| 項目 | 2023年度 | 2024年度 |
|---|---|---|
| PIO-NET全体の相談件数 | 89.3万件 | 91.0万件 |
| 65歳以上の相談件数 | 277,604件 | 304,130件 |
| 65歳以上が全体に占める割合 | ― | 38.6% |
| 賃貸アパート・マンションの相談件数 | ― | 34,838件(第4位) |
※ サブリース契約のみを切り分けた個別の年度別相談件数等は、公表資料に記載がないため掲載していません。「―」は該当データの記載がない項目です。
出典: 独立行政法人国民生活センター『2024年度 全国の消費生活相談の状況−PIO-NETより−』(2025年8月6日公表)、『2024年度 65歳以上の消費生活相談の状況』(2025年9月3日公表)
PRECEDENT
最高裁判例と借地借家法第32条
賃料減額請求を巡る紛争は裁判で激しく争われ、最高裁平成15年10月21日判決(センチュリータワー事件等)によって法的判断の枠組みが確立されました。
第32条1項が適用される
一括借り上げ・最低賃料保証という共同事業的な性格があっても、形式が建物の一括賃貸借である以上は建物賃貸借契約であり、賃料増減額請求権(借地借家法第32条1項)の適用を受けます。
特約があっても排除できない
第32条1項は強行法規のため、「将来にわたり減額しない」「自動的に増額する」といった特約があっても適用を排除できません。サブリース会社は特約の有無に関わらず適法に減額請求を行えます。
減額の当否は総合判断
減額請求があっても当然に請求どおり認められるわけではありません。地価や公租公課の増減、近隣相場に加え、賃料決定の経緯、投下資本の回収、融資返済計画、自動増額特約の合意経緯などを総合的に考慮して判断されます。
賃貸借の種類で「賃料不減額特約」の効力が変わる
普通建物賃貸借
第32条1項が強行法規として適用されるため、「賃料を減額しない」等の特約があっても無効。会社からの減額請求を法的に拒絶することはできません。
定期建物賃貸借
第38条9項により、借賃の改定に係る特約がある場合には第32条を適用しないとされています(※2022年5月18日施行の借地借家法改正で旧7項から9項に繰り下げ)。賃料減額を明確に否定する特約を設けていれば、減額請求に応じる必要はありません。
減額請求を受けても即座に同意する必要はなく、まず協議し、合意できなければ調停・裁判で解決します。裁判で相当賃料額が確定すると、減額の効力は「減額請求がなされた時点」に遡って発生し、大家は請求時から判決確定時までに受け取った差額に、年1割(年10%)の利息を付して会社へ返還する義務を負います(借地借家法32条3項。現在の法定利率〔年3%〕より高い利率である点に注意が必要です)。
REGULATION
賃貸住宅管理業法(サブリース新法)
多発するトラブルから大家・入居者を保護するため、2020年に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年法律第60号)」が成立し、順次施行されました。
主な用語の定義(第2条)
- 賃貸住宅
- 賃貸借契約により人の居住の用に供する家屋またはその部分。オフィスや倉庫等は「住宅」に該当しない。
- 賃貸住宅管理業
- 大家から委託を受けて維持保全(点検・清掃・修繕)を行い、併せて家賃・敷金等の金銭管理を行う事業。
- 特定賃貸借契約
- 転貸(サブリース)事業を目的に締結される、実質的なマスターリース契約。
- 特定転貸事業者
- 特定賃貸借契約に基づき借りた住宅を第三者へ転貸する事業を営むサブリース業者。
事業者・勧誘者に対する主な規制
サブリース業者だけでなく、建設請負を迫る建設業者や土地売買を仲介する不動産業者などの「勧誘者」も規制の対象です。
誇大広告等の禁止
保証家賃額・支払期日・改定時期・減額請求権・利回り・維持保全の方法などについて、事実と著しく相違する表示や、著しく優良・有利と誤認させる表示を禁止。「家賃保証」等を用いる場合は、隣接箇所にリスクも明確に併記する義務があります。
不当な勧誘等の禁止
重要事項について事実と異なることを告げる「不実告知」や、都合の悪い事実を故意に告げない「不告知」を禁止。将来の減額可能性、会社側からの解除可能性、大家からの解約に正当事由が必要なこと、修繕・原状回復費の負担などが対象です。
重要事項説明・書面交付
契約前に「重要事項説明書」を交付し口頭で説明。国土交通省は、検討期間として説明から契約締結までに1週間程度の期間をおくことを推奨しており(法律上の義務ではなく運用上の取扱い)、説明は親会社や建築業者の代行は不可で、契約当事者の会社自身が行います。承諾を得れば電子交付・IT重説も可能です。
登録制度と業者の義務
管理戸数が「200戸以上」の賃貸住宅管理業を営む者は、国土交通大臣への登録(5年ごと更新)が必要です(200戸未満は任意登録)。
業務管理者の選任・配置(第12条)
営業所ごとに知識・経験を有する業務管理者を1名以上専任配置。賃貸不動産経営管理士や宅地建物取引士が所定講習等の要件を満たす必要があります。
財産の分別管理(第16条)
大家から受領する家賃・敷金等を、自己の固有財産や他の大家の財産と明確に区分し、専用口座等で分別管理します。
大家への定期報告(第20条)
維持保全の進捗や金銭の管理状況などについて、委託者である大家へ年1回以上、定期的に書面で報告・説明します。
※ 本ページは一般的な情報提供を目的とした概要であり、法的助言ではありません。個別の契約・判断にあたっては、弁護士等の専門家にご相談ください。記載の統計・数値は参照元資料に基づきます。
サブリースでお困りの場合は、まず上記の公的な相談窓口・資料のご利用もご検討ください。
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